北海道の鉄道史の草分けとして手宮線を紹介したが、手宮線ときたらセットで考えて差し支えないのが今回紹介する幌内線である。この路線は幌内鉄道の一部として日本で3番目に開設された官営鉄道の一部であるということは手宮線の項で説明させていただいたので、幌内鉄道に関しての詳細は割愛させていただく。尚、下図中の「三笠」は旧駅名で後年は幌内太(ほろないぶと)となっていることを付け加えておく。 幌内線は昭和47年(1972)に三笠(幌内太)〜幌内間の旅客営業を廃止し、この区間は貨物支線となった。その後長い歴史を持つ炭礦も閉山となり、昭和56年(1981)に三笠〜幾春別間の貨物営業を廃止、そして昭和62年(1987)年には全線を廃止し、北海道鉄道創生期からの歴史に幕を閉じたのである。 ![]() この時期の北海道の廃線踏査は天候との闘いである。既に一昨日から北海道入りしていた私は、前日に夕張方面の廃線跡を廻っていた。地図で見ると「なんだ、札幌の隣町みたいなもんじゃないか」と思ってしまうが、よく地図を見ると他の地方とは縮尺が違うから要注意である。私のよく利用する昭文社の県別マップルにも北海道だけはない。つまり巻番1がなく2の青森からスタートしている。このシリーズは縮尺が大きく細かいところまで載っているので重宝するが、おそらく北海道で作ったらものすごい厚さになってしまうのは想像がつく。そういうわけで今回は別の地図を利用しているのだが、わかってはいてもぱっと地図を見ただけでは時間が計れない。そのことが前日から我々を苦しめる要因の一つになっていた。だから、地図上の1センチを移動する間に天候が激変したりする。この日もスタートの万字線を踏査中に天候は雨から雪へと変わっていった。この雪が札幌の初雪となった。 万字線の踏査を終え、 山を下っていっても雪の勢いは衰えなかった。BAKUの運転する車の助手席で窓の外を見ていると、白い大粒の塊がどんどん路肩に降り積もっていく。これは早めに勝負をかけた方が無難かと検討し、幌内線の終着である幾春別から巡ることにした。現在走っている道道30号からは、岩見沢に行くよりもそちらに向かった方が時間が節約できそうであったからだ。ましてやこの季節、北海道の夕暮れは早い。4時には既に薄暗くなっている。しかも夜からは仕事があるので、そんなにゆっくりしていられる状況ではなかった。道程は三笠市に入り、幾春別へ向けて道道917号を右折した。 幾春別に向かう途中、既に幌内線の路盤が道道に寄り添って来ていた。当時そのままの駅跡もある。車を停めて見てみたいのを我慢して先を急ぐ。まっすぐな北海道らしい道の行き着く先に幾春別はあった。 ![]() 雪が降りしきる中、幾春別の駅跡に降り立つと、そこはバスターミナルになっていて駅跡を現す石碑が建てられていた。ここが手宮線とを結んだ北海道鉄道創世期の末端であることを思うと感慨深くなる。この場所には何も無いが、手宮と同じく幌内には鉄道公園もある。足元を気にしながら、幾春別から分岐していた炭礦専用線を探すが場所がはっきりしない。近年道路が拡張され、分岐点なども明確ではなくなったようだ。分岐の終点であった炭礦跡へ行き当時の盛況を思うが、現役の炭礦を見たことのない私に思い出す術はあるわけもなかった。巨大な廃墟だけが今もその異様を放っているのが印象的であった。 ![]() 幾春別から岩見沢方向へ向かうと、最初の停車駅は弥生駅であった。実は5月にBAKUがプレリサーチを行っていたため、場所を探す時間はほとんどかかっていない。しかし弥生駅跡は現在拡幅された道路の築堤に半ば埋もれたような形になっていた。プレリサーチでBAKUが発見できず土手からカメラごと転げ落ちたらしいが、わからなければ私でも土手を下っていたかもしれない。細い路地を入れば幾春別と同じく石碑が建っているが、それは人目に触れずひっそりと駅跡を示しているのであった。わかってしまえばなんてことはない。しかしわかるまでの過程が廃線探しの醍醐味でもあると私は思っているが。 石碑ひとつ、「弥生」という春を待つ名を持つ土地に残されたただ一つの痕跡であった。 ![]() ![]() 弥生駅を出ると、すぐに幾春別川をガーター橋で渡る。 BAKUが夏に来たときはその姿を確認するのも一苦労であったらしいが、その植生は葉を落としただけで橋もまでの路盤を我々の進入を拒むかのように密生していた。 吹き付ける雪は、我々の行く気を完全に削いでいた。どこかいいポイントはないかと探し廻るが、ようやく木立の隙間からその姿を拝むのが精一杯であった。北海道恐るべしである。 ![]() 道道116号と917号の分岐点で、廃線跡は917号沿いに走っている。ここで917号を踏切で横断していたのだが、前後の路盤は残っているが踏切そのものは跡形も無くなっていた。 気温は完全には下がりきっていないようで、道路に落ちた雪は次々と溶けていく。僕の横を大げさに水しぶきを上げてトラックが通り過ぎる。気付かないのを知りながら、その後ろ姿を僕はギッと睨んだ。 どこまでも煙る空をじっと見ながらBAKUがぽつりとつぶやいた。 「これはやみそうにないねぇ」 僕は何も言わなかった。 第一回 終わり 第二回へ続く。 ![]() |