東北本線旧線 藤田〜貝田 福島県 2005.6.15踏査


 6月15日、東北地方南部はこの日梅雨入りということで、朝からはっきりしない天気である。先日、掲示板にてSo What?さんより頂いた情報を元に早速福島県国見町へとBB氏と共に向かう。とりあえず写真だけ撮り、その後廃止の経緯を調べた後に発表するつもりでいたのだが、思いがけず現地で簡単に情報が手に入ってしまったので早々に公開することとした。先ずは地形図から見て頂こう。



 江戸時代の宿場町、貝田の地に日本鉄道によって鉄道が敷設されたのは明治20年12月のことであった。JTB刊「鉄道考古学を歩く」(浅野明彦著)によれば、そもそも日本鉄道の計画では地勢の緩い阿武隈川沿いに鉄道を敷設させる予定であったが、予定沿線の主幹産業である養蚕業を営む関係者から「蒸気機関車の煤煙で桑が枯れる」という強い反対があったらしいこと、阿武隈川を二度渡る必要があること等の理由から、国見峠を越える現在のルートが選定されたらしい。そしてその元々の計画ルート上にはかつての丸森線、現在の阿武隈急行が開通している。「桑が枯れる」という理由はもっともらしい理由ではあるが、実際当時の用地取得はかなり強引であり、そういった圧政からの反発もあったのではないかと同書は推測している。たしかに阿武隈川の川幅は半端でなく広く、そこに2カ所も長大な橋を架けるということは当時の技術や予算の関係から避けたいということは予測できる。多少勾配がきつくとも奥州街道沿いのルートを選ぶのは自然であったとも言える。
 さてこの旧線跡であるが、実は東北本線の複線化とは全く関係が無く、現在線への移行はかなり古い話で、大正六年のことであった。その理由も良くある「勾配緩和」や「曲線改良」といった類のものでは無く(多少はあったと思うが)、「火事が頻発したから」という理由であった。地図を見てもわかるとおり、旧線の軌道は貝田宿のど真ん中を突っ切るように敷設された。その為、藁葺きの屋根に火の粉が飛び度々火災が発生したため、線路の上に「散火板」という火の粉の飛散を防ぐ板まで取り付けたという(貝田旧国鉄軌道敷跡町道整備記念碑文より)



 今回は起点側ではなく、分かり易く貝田駅側から辿ってみる。貝田駅側の分岐点は、実はあまり明確ではない。というのも、実はこの貝田駅自体、現在線移行後に出来たものなのだ。前身は大正11年に貝田信号場として建設され、戦後の昭和27年に駅として昇格した。
 現在の貝田駅の敷地自体、実はかつての奥州街道であったようだ。











 現在の国道4号線のすぐ横に残る細い道がかつての旧線である。駅周辺は信号所建設の際等に取付道路を作ったりしたため地形は滅茶苦茶だが、奥に向かって真っ直ぐ伸びる道から先は路盤跡が明瞭に残る。






















 旧線とは直接関係ないが、駅のそばの旧線路盤沿いに貝田駅建設記念碑が建っている。

















 鉄道に関する遺構は何も無い。しかし強烈に鉄道臭さを感じさせる良い感じのカーブを描く町道。沿線の街並みは火災によって大きく変わってしまったという。















 感じのよい旧線跡だなと思っていたら、やはり地元の保護がしっかりしていたからであった。道路整備と近代鉄道遺構保存の融合が絶妙なバランスで行われていた。安易に道幅を広げられない土地でもあり、尚かつ町全体の道が遊歩道程度の幅で、既に生活道路として長い時を経て来たという好条件が重なったからこそできた形。
 私の中でのBEST旧線跡とも言えるすばらしい場所だ。









 実はこの遺構こそ、掲示板を見て最も期待していたものである。先ほどの記念物の真下には、非常に保存状態の良いアーチ橋梁が現存していた。下に降りようとしたが、非常に高さがある。地面だと思って足をおろしたら、何も無い空中で一瞬ひやっとする。













 路盤の幅がそのままに町道に転用されている。新しい家屋も目立つが、やはりどことなく宿場町の雰囲気を残している。



















 番所があったという場所の角に旧線跡であることを示す標柱が建つ。かなり昔から旧線の跡が大事にされてきたのか、標柱自体も古びている。

















 秋葉神社の前で、旧線の路盤は桃畑の中に入る。畑になっても旧線の路盤がそのまま農道として使われていた。



















 そのまま桃畑の中を歩いていくと、やがて現在線と合流した。


















 最後に掲示板でもSo What?さんによって紹介されていた案内板をアップしておく。はっきり言おう。この場所は超オススメ物件である。非常に感激した。なんてことないといえばそれまでなのだが、旧線を取り巻く街の雰囲気が最高なのだ。このネタを発見してくれたSo What?さんに感謝しつつ、今回のネタは終了。旧奥州街道のうんちくはTUKAさんに期待しつつ…w。


END

トップページへ
廃線メニューへ